マイアミのダウンタウンに新しい屋上ができました。ビスケーン湾に面したアリーナ、NBA のヒートが本拠地にする Kaseya Center の上に、WELCOME TO が大文字のブロック体で、Vice City がゲームと同じピンクの筆記体で組まれ、末尾に VI のロゴが置かれています。地元局のヘリがその上を飛び、ニュースは映像にテロップを一行かぶせて流しました。RETURN TO VICE CITY。記事を書く手間まで省いてくれる一行です。
目を留めるべきは文字そのものより、その置き方です。真っ平らに、文字面を上に向けて寝かせてあります。ビスケーン・ブルバードを歩く人がこれを見ることは一生ありません。見えるのは飛行機からです。このアリーナはマイアミ国際空港への進入経路の真下にあり、屋上は街のなかで唯一、空からしか読めない面です。
だからこの出稿は、今月のほかのものとは種類が違います。ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨークに立った Spotify の看板は路面の高さでした。アルバムと YouTube のボタンを出したタイムズスクエアの大型スクリーンは、世界でいちばん人が通る壁です。どちらも売っていたのはレコードでした。こちらが売っているのは街のほうで、宛先はこれから到着する人たちです。
マイアミはこの2年、冗談でもあり本題でもありました。GTA 6 の舞台はバイスシティ(Vice City)とレオニダ州の各地で、Rockstar は公式の文章でフロリダという単語を一度も使っていません。州は架空で、スカイラインはそうではありません。ゲームの歓迎看板を本物のマイアミの屋上に載せるのは、その円をいちばん素直な形で閉じる手です。実在の街へ降りていき、下を見ると、架空のほうが先に出迎えてくれます。
この設置について発表は何もありません。屋上にあるのは看板が一枚。その後ろにある日付のほうは、街じゅうがとっくに知っています。11月19日まで、あと57日です。
